2011年12月25日

モスクワ交通渋滞問題の体験

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 モスクワは交通渋滞が社会問題になっている、ということは耳にしたことがあるかもしれません。といいますのも、鳩山由紀夫元首相の長男である、鳩山紀一郎氏がモスクワで、渋滞緩和政策の研究を行っているという報道が、以前に流れたことがあるからです。去年の夏ごろに、鳩山首相夫妻もモスクワを訪れたというニュースもありました。


 渋滞問題があることは、そのような報道から知っていて、実際にモスクワに住んでいて、確かに車は多い、という印象は受けていました。ただ、留学中の交通手段といえば地下鉄やバスであって、車に乗る機会はさほど多くはありませんでした。ですので、体感レベルとしての渋滞というのは、とくに意識したことはなかったのでした。

 それが、先月のプログラムでモスクワを再訪した際に、深く実感するにいたったわけです。基本的に車移動だったので、ずいぶんとその渋滞の影響を食らったのでした。
 まず、初日を迎えた時点で、これはヤバイという危機を覚えました(笑)地下鉄に乗れば30分もかからない距離を、なんと2時間!いきなりの洗礼でした。最たるは、歩けば10分から15分の距離を、車を使ったがために1時間もかかったでした。
 
 聞くところによると、モスクワの道路では左折が禁止だというのです。確かに移動中に左折をした記憶はなく、常に右へ右へとぐるぐる回っていた印象があります。もっとも、モスクワの道路というのはかなり広く、車線がいくつも連なっているのです。はっきり言ってモスクワでは運転しようとは思いません……。ロシア人でさえモスクワでの運転は怖いと言ったりしていますし。そして何よりもみんなビュンビュン飛ばすのです……。

 確かに、こんなにも車での移動が不便だと困ってしまいます。一つモスクワの交通状況についての記事(米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」より)を引用します。


■モスクワ(ロシア)
モスクワ市内の渋滞時間は日平均2.5時間で世界最長。ロシア国内の自動車台数は全EU圏と比較しても3分の1以上を占めており、にもかかわらず、道路のインフラ状況は世界111位となっている。飲酒運転や悪天候が多くの交通事故を誘発しており、ロシア運輸省によると、交通の混乱によって年間128億ドルを損失している。ある調査では、モスクワ市民の4割が「過去3年以内に3時間以上の渋滞を経験した」と回答している。



 個人的には社会問題を実感できてよい経験だったと思っているのですが、住む側からすればたまったものではないですよね……。


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posted by Itta Tojiki at 23:58| Comment(6) | ロシアの社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月23日

「東洋顔」のロシア人

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 ロシアという国は多民族国家だとよく言うけれども、実にその通りであって、まるで世界の縮図を観るかのような印象を覚えるほどに、さまざまな「顔」に出会うことが多い。日本人のような「東洋顔」というのも珍しくなく、一見したところ、おやおや、と思ってしまうロシア人に出会うこともある。もっとも、しぐさや雰囲気からすぐに日本人ではないことは分かるのだが、もしも日本風のファッションに身を包んでいる彼らの静止画でも突きつけられようものなら、どこの人であるかを判別するのが難しいかもしれない。

 僕の友人に、まったくの「東洋顔」を持った男がいる。一緒に歩いていれば同族と間違われるかもしれないくらいの顔なのだ。彼が流暢にロシア語を話すものだから、ロシア人だと分かるだけであって、仮に東京に彼をポツンと置いてみれば、おそらくほとんどの人は日本人だと信じて疑わないだろう。

 あまり詳しいことは語ってはいないし、こっちからも聞きづらいこともあってか、彼の詳しい出生については知らない。ただ、「〜共和国」系であることは、いつだがほのめかしていた記憶がある。外国では政治、宗教、そして民族の話題はタブー視されるけれども、ロシアも例外ではなく、自分の出身についてあまり話したがらない人も少なくないという。

 その「東洋顔」の友人とは留学中に知り合い、他のロシア人たちとも交えながら一緒に遊んだ仲だった。少なくとも当時の僕の眼からすれば、彼はスラブ系の、いわゆる「ロシア人」と上手くいっているような気がしていて、やはり友人関係とかなら民族なんていうのは問題にならないんだ、と楽観視していた。しかし、その楽観は本当に認識の甘さに他ならなかった。

 先月モスクワを訪れたときに、友人たちと再会を果たした、という話ははしたけれども、その彼とも久しぶりに顔を合わせることができたのだった。相変わらずの屈託のない彼の微笑みに安堵を感じ、他のスラブ系のロシア人の友人とも接していたけれども、何か彼の他のロシア人に対する態度が妙によそよそしい感じがあった。「東洋顔」の彼と思い出話をしていると、彼はおもむろに声をひそめた。

「最近、俺はあのグループ(留学中に仲よくしていたスラブ系ロシア人の多いグループ)とは一緒にいないんだ。」
「ん?」
「なんたって、俺はアジア顔だろ?だからちょっといづらくてね……。」
「……。」
「日本に行きたいなあ。あそこならみんなアジア顔だし、俺がいてもおかしくないだろ?」
「まあ、そうだな……。……。」
 
 彼の放った些細な言葉は、どこか陰を帯びながらズシリと重みがあった。僕が知らないところで、彼は彼なりに悩みを抱えていたのだろう。それもとってもデリケートな問題を。思えば、そのときに彼が一緒に連れ添っていた友だちもまた、「東洋顔」だった。

 彼に何があったのか知らない。彼が何を思ってそう言ったのかも分からない。こういう悩みを抱えている人の気持ちは、当事者でなければ理解はできない。ただ、何か重々しく彼に圧し掛かっている深刻さは、彼の言葉の雰囲気にあった。へへっとほくそ笑みながら、どこか諦念を感じさせる目で、それでいて彼の現状を伝えようとする感じがあった。


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posted by Itta Tojiki at 21:10| Comment(0) | ロシアの社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月13日

【未発表分1】モスクワ滞在レポート

 ずいぶんと更新ができておりませんでした。シューカツですか……、という質問も聞こえてきますが、ただ単に授業の発表とレポートが立て込んでいただけなのです……。出来るだけ早く「モスクワ滞在レポート」を仕上げたいので、また書いてゆきます。2週間たち新鮮味も若干は薄れたかもしれませんが、メモを引っ張りだして記していきます。

 11月22日
【在モスクワ日本大使館】
 僕ら一団を迎え入れてくださったのは、広報と政務と担当されている方々。以下要点だけピックアップする。
・ 広報は主に文化交流の推進などを担当しており、実際に参加したJ-FESTも日本大使館の援助がしている。
・ ロシアにおける日本文化の発信は年々進んでいるが、いまひとつ乏しいのが日本国内におけるロシア文化の紹介だという。これは日本国ではなく、在日ロシア大使館の仕事に当たる。

政務担当の方からは、日露協力について話をしていただいた。
・ 最近だとアフガニスタンにおける麻薬対策は協力して活動を行っているとのこと。
・ 「北方領土」は国の「実利」の問題ではなく、「尊厳」の問題だとのこと。今後も国際法の立場で徹底して主張してゆく、と。
・ 日露の相互理解がますます必要。例えば、第二次世界大戦の後の「シベリア抑留」については、ロシアではあまり知られていない。

 そのほか、経済の話、外交事情などを伺えた。
・ 現在ロシアに進出している日系企業の数は200にも満たない。(ドイツには8000社進出)
・ 今後の経済分野としては、ガス、石油のエネルギー部門はもちろんたが、「省エネ技術」の輸出が注目されている。(日本のエネルギー効率はロシアの18倍)
・ 在ロ日本大使館と本部外務省の間には、もちろん意見のギャップがあり、いつもスムーズにことが運ばれるわけではない。
・ 対ロシア外交において、「飲酒」のスキルは大事か?以前ほど必要性は減ったが、国防省、内務省系のいわゆるシロヴィキ系は、相変わらず飲むらしい。


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【ロシア連邦外務省 アジア第三局】
 ロシア外務省にて、日本を担当している部署はアジア第三局にあたる。局長がじきじきにお話をしてくださった。お話自体は時間が限られていたこともあり、十分に深いところは聞けなかった。主に言われていたことは、以下の点である。
・ 日本は太平洋にある重要なパートナーである。
・ ロシアには、経済成長が必要で、日本の技術支援などが必要だ、とのこと。

 非常に型にはまった内容だったが、これが外交の常套なのだろうか。一通り話が終わった後に、個別に質問する時間があったけれども、僕は他の外務省の職員の人たちと話していた。


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【ロシア学術文化局 独立国家共同体(CIS)担当及び在外ロシア国民人文協力担当庁】
 日露関係全般から、最近唱えられている「ユーラシア共同体」への言及がなされた。まず日露関係について。

・ もはや政治関係だけではなく、民間レベルでの交流が必要になっている。あらゆる問題を解決するには、まず「友達」にならなくてはならない。「友達」になれば、話す内容の幅も広がるし、より掘り込んでの対話が可能だ。
・ 2013年に、日本にロシアの文化センターを建てる予定がある。ここでは、文化交流だけではなく、日本にいるロシア人の教師や日本でロシア語を教える日本人の支援も行う。
・ 日露関係においては、北方領土問題が必ず絡んでくるが、ひとつのことに固執しても話は進まない。

 日露関係があまり芳しくないことに対して、ひとつ面白い問いを投げかけられた。

「なぜ日本は、原爆を落としたアメリカと仲良くできて、それを受け入れられているのか」

 この問いに答えるには、様々な観点から述べる必要があって、とてもではないけれど、このレポートのコンテクストで収まるような内容ではないので、割愛する。いずれにしても、ある種の日米関係の不可解さを指摘する素朴かつ本質的な問題のような気がする。

 「ユーラシア共同体」について
・ 経済利益のための人の移動というのは、自然なこと。
・ 近年、出稼ぎ労働者への移民問題があがっており、ナショナリズムが台頭しつつあるが、これはいけないこと。ナショナリズムは一部の政治家の利益にしかならず、多民族国家を標榜するロシアにとっては終わりに等しい。
・ そのような人や金の移動の問題をシステム的に解決するのにユーラシア共同体が必要
・ ユーラシア共同体に参加しないCIS諸国は、この加盟機会を逃すと、後の経済発展は難しくなるだろう。CISにおいては、ベラルーシとカザフスタンが牽引している。ただし、ウクライナの加盟だけは、スムーズに話が進んでいない。


 報告、ということで、特筆すべきことや言及された点を主に取り上げました。まだ未報告の部分がありますので、それも随時公開していきます。

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posted by Itta Tojiki at 23:58| Comment(0) | モスクワ滞在 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月10日

大規模デモについて―もはや他人事ではない……

 本来なら、先日のモスクワ滞在のレポート(実際に執筆中)を公表すべきなのだろうが、今のモスクワの状況――下院選を受けての大規模デモ――を考慮すると、このことについて言及せずにはいられない。

 さっきからネット上では、デモを伝えるニュースでにぎわう。参加者が3万とも4万とされ、いずれにしても大規模であることには変わりない。これまでなら、ただロシアの出来事だとして、興味のある人間として眺めておくことができた。だが、今回のデモの場合だけは、僕に切迫した現実をつけつけている。なぜなら、僕のfacebookのページに、「デモに参加します!」という友人たちのコメントが見られるからだ。
 デモの当日である10日を迎えるまでに、いく人かの友人の参加が確認でき、そしていざ当日になると、リアルタイムで写真をアップロードしていた。現在日本に留学しているロシア人の友人も、ustreamでの生動画をアップしていた。ロシア政治の実情が、社会に対するロシア人の声が、こんなにも生々しく現されるなんて思ってもいなかった。

 ロシア政治が今後……、なんていう話もあるだろうが、まずは参加している友人たちの無事だ。許可を得たデモだと伝えられているし、これまでの報道ではまだ武力的な話はあがっていない。とはいえ、気になってしまうのは仕方のないこと……。
 
 プーチン権力の失墜だ、などと先走った言及は避けたいし、デモに参加した友人たちをエライと称えよう、という政治のお話をする気もない。今のところ、僕は政治の話に立ち入りたくない。
 逃げているのですか、という問いが聞こえてきそうだが、いや、安易に政治に口出しをするのは危険だと考えているからである。もちろん、西洋的な民主主義が大事なんだ、という論理を用いれば、ロシアは糾弾されるべき国家ではあるだろう。ただ、それはロシアと関わっていこうとする人間の意見としては、浅はかだと思うのだ。

 正直なところ、こんなにも「ロシア」が自らに迫ってきたことに、大いなる驚きを覚え、面食らっている。一度、この現実を深く心身に落とし込む必要があるだろうし、もっと永い時間、「ロシア」と触れなくてはならないだろう。そうしたときに、ようやく自身のロシア観というのが、わずかな光を帯びてくるだろう。

 ともあれ、今回のデモは、僕に新たな次元での思考を強いた。なじみの場所に、デモ隊が群れをなし、その中に知っている顔がまぎれているのだ。何かそわそわせずにはいられないではないか!

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posted by Itta Tojiki at 23:58| Comment(0) | 個人的なこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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