2011年07月12日

甦るペテルブルグの記憶―『蒼ざめた馬を見よ』より

 1時間ほど時間があったので、大学の図書館へとぶらついた。特に目的もなかったので、わけもなく「日本文学」のコーナーへ足を向けた。帰国してからというものの、日本文学にハマっているせいかもしれないが、そのとき、一人の作家の名前が目に入った。五木寛之、である。五木寛之の全集がびっしりと並べられていたわけだが、そこでかねてから探していたひとつの作品のことを思い出した。『蒼ざめた馬を見よ』である。僕は、迷いなく全集の第一巻を手に取り、一気にその場で読み終えてしまった。
 この作品は、1967年の直木賞受賞作であり、ロシアを舞台にしたものである。五木寛之のもうひとつのロシアに関する小説、『さらばモスクワ愚連隊』は、以前このブログで紹介したこともある

 『蒼ざめた馬を見よ』の舞台は、当時レニングラードと呼ばれていた、現在のサンクト・ペテルブルグ。あらすじに関しては、僕がどうこう言うよりも、こちらのサイトに詳しい。


 物語の内容ももちろん面白かったわけだが、僕の興味をひきつけたのは、ところどころに登場するロシア文学、そしてサンクト・ペテルブルグという街の描写である。
 以前サンクト・ペテルブルグへは旅行として行ったことがあり、中心街を歩き回ったことは、いまだに記憶に新しい。だからこそ、イサク聖堂やネヴァ川、エルミタージュという名詞が作中に登場すると、かなりリアルに風景が思い浮かぶ。さらには、プーシキンの『青銅の騎士』という詩まで挿入されているものだから、めぐり合わせが面白くて仕方がなかった。

青銅の騎士.jpg

DSCF7412.JPG

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 加えて、同じ全集に掲載されていた『さらばモスクワ愚連隊』にもさっと目を通してみたけれども、舞台がモスクワなだけに、出てくる場所という場所が手に取るように分かる。さらには、以前よりもロシア語の知識が増えていることもあってか、会話のニュアンスもより深く捉えられているようになった気がした。
 
 今回のちょっとした読書は、「本物」を一度見るということがどういうことなのか、改めて考えさせてくれた。もっとも、自分が見てきた残像にばかりに囚われて、想像の幅を狭めるのはよろしくない。ただ、こうやって作品を身近に感じながら読んでいく、ということも読書の楽しみの一つなのかもしれない。ひょっとしたら、思い入れのある作品とは、こうやって自分の中に残っていくのかもしれない。いずれにせよ、嬉しい本との出会いだったということは言うまでもない。

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posted by Itta Tojiki at 23:45| Comment(1) | 文学より | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
Posted by りれきしょ at 2013年12月06日 15:28
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