2011年06月04日

「分かりません」と言う開き直り

 外国語で会話していて、よく「分かった?」と聞かれることがあります。相手に自分の意図が伝わっていることを確認するためです。
 留学したばかりのときには、分かっていなくても、分かった、と答えていました。なぜかと言うと、分からない、ということはロシア語能力が足りないからだ、と短絡的に考えていたからです。ロシア語が出来なくて当たり前じゃないか、と思う一方、3ヶ月くらいいるけど、いまだにロシア語が聞き取れないなんて……恥ずかしい、と思う自分への反発でもありました。

 しかし、ふと考えたのでした。日本語でも、脈絡のない質問や、発言の意図が汲み取れないときには、「よく分かりません、どういうことですか?」と聞き返すじゃないか、と。そう考えるとずいぶんと気が楽になりました。「どういうことですか?説明してください」と気兼ねなく言えるようになり、当初のように葛藤しなくて済むようになったのです。もっとも、「あ、コイツはロシア語が分かんねえのか……」と思われたこともゼロではなかったのですが……。

 日本に帰ってきて、ますます僕の判断が正しかったことが感じられるようになりました。日本語であっても、主述のはっきりしないものや、脈絡のないものについては、理解に苦しみます。また難しい言葉ばかりを並べて話されたり、熟語が多く同音異義語に悩まされたりという場合にも、聞き返すことになります。さらには、聴き取りやすい話し方かどうか、ということもポイントだと思います。

 そう考えると、外国語も同じじゃねえのか、と半ば開き直ることができると思うのです。みんながみんなアナウンサーのような明瞭な発話者なわけありませんし、みんながみんな「池上彰さん」のような話し手であるわけではないのです。
 
 ちょっと前に難しく考えていたことが、ふと頭によぎったので、書き記しておきました。

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posted by Itta Tojiki at 23:59| Comment(0) | 教訓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月01日

「ソ連に行ってたとよね?」―「ばあちゃん」との会話

 帰国してからずいぶんと身の回りが落ち着いてきたので、日本でお世話になっている人たちに帰国報告をはじめています。今日は、僕の祖父母の代から家族ぐるみの付き合いをしている一家のところへ電話をしました。すると、僕が「ばあちゃん」と親しみをこめて呼んでいる方が出てくれました。
「あら〜、帰ってきたとねーー(帰ってきたんだね)」
と懐かしい声がしました。

「え、ソ連のシベリアに行っとったとかね?(行ってたんだっけ?)」
「(笑)いえいえ、首都のモスクワですよ。」

 大正から昭和へと時代が流れるころに生を受けた人にとって、ロシアとはソ連のことであり、大方のその世代の人たちにとってのソ連とは、シベリア、を思い浮かべるのでしょう。

ナホトカとかには行かんかったとね?(行かなかったの?)」
「いえいえ、あっちは日本寄りなので、行ってないですねー」
「ふ〜ん、あんね、私の身近な人たちは、みんなナホトカから日本に帰ってきたとよ」

 シベリアに抑留されていた日本兵の多くは、ナホトカの港から帰国したといいます。やはり、その世代の人たちと、僕らとでは、ロシアに対するイメージはずいぶんと違うのでしょう。多くの年配の方たちは、決してロシアに対して良い印象は抱いていないと聞きます。留学してロシアに好感を持っている僕のような人にとって、このことは留意しなくてはならないことだと思います。日露関係で、多くの日本人が苦しんだ時代はさほど昔ではない、ということを、あまり気にも留めていなかったことは、恐ろしいことです。その人の穏やかな語り口に、大いなる反省を強いられました……。

話は続きました。
「……、まあね〜最近ちょっと日本は大変やけどね……。ただまあ、これまでの日本人は、苦労知らずでちょっと幸せ過ぎたのかもしれんね……。もちろん、幸せに越したことは無いんやけど、そればっかりでもいかんと思うとよね……。」
「……」
「大正、昭和から戦争を知ってるもんからすれば、今の状況とかは何とも思わんけど、今の人からしたらたいそうなことじゃろうね(たいそうなことだろうね)……。」

 人生の大先輩の言葉は、穏やかだけれど重い。重すぎる。海外を見てきて、今の日本についても何だかんだと言って、ある意味では「有頂天」にさえもなりつつあった僕は、大いに反省しなければならない。10分余りの電話での会話は、「頭にハンマー」くらいの衝撃だったのでした。

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posted by Itta Tojiki at 20:27| Comment(0) | 教訓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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